\(Schwarzschild\)の歩んだ道をとりあえず進んでみることにする。彼が仮定した3条件は次のとおりだった。
仮定1:静的
仮定2:球対称
仮定3:真空
そして\(Einstein\)方程式を少し書き換えたものが次の式だった。
▼\(Einstein\)方程式
\(R_{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}(T_{\mu\nu}-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}T)\)
■真空条件の要請
さて、ここから豪快にいこう。仮定3から、真空であることを\(Einstein\)方程式に要請すると、物質がない、つまりエネルギーがないから、\(T_{\mu\nu}=0\)である。ついでに\(T=0\)でもある。
すると\(Einstein\)方程式は、なんと
\(R_{\mu\nu}=0\)
これは?もうゴールが近いのでは?
いや、見かけに騙されてはいけない。これは右辺が0になっただけで、\(\mu\)と\(\nu\)にそれぞれ\((ct,x,y,z)\)があるから、16本の連立方程式が残っている。しかしいくらかの式は同じ式だ。
対称性によって\(R_{\mu\nu}=R_{\nu\mu}\)であるから、それでも10本の独立した式を解かねばならない。
\(R_{(ct)(ct)}=0, R_{(ct)x}=0, R_{(ct)y}=0, R_{(ct)z}=0\)
\(R_{xx}=0, R_{xy}=0, R_{xz}=0\)
\(R_{yy}=0, R_{yz}=0\)
\(R_{zz}=0\)
の10本の連立式だ。
なにより、右辺が0の方程式が簡単だと誰が言ったのだ?簡単かどうかは左辺の中身次第なのである。
■左辺を紐解く
左辺の\(R_{\mu\nu}\)を\(Ricci\)テンソルという。これがまた曲者だった。
その中身は、
\(R_{\mu\nu}≡R^{\sigma}_{\mu ,\sigma \nu}(=R^{(ct)}_{\mu ,(ct) \nu}+R^x_{\mu ,x \nu}+R^y_{\mu ,y \nu}+R^z_{\mu ,z \nu})\)
である。そして、この右辺に出てきたものは\(Rieman\)テンソルというもので、
\(R^{\kappa}_{\lambda ,\mu\nu}≡\partial _{\mu}\Gamma^{\kappa}_{\lambda \nu}-\partial _{\nu}\Gamma^{\kappa}_{\lambda \mu}+\Gamma^{\tau}_{\lambda \nu}\Gamma^{\kappa}_{\tau \mu}-\Gamma^{\tau}_{\lambda \mu}\Gamma^{\kappa}_{\tau \nu}\)
である。小さいカンマは偏微分の省略であった。\(R^{\kappa}_{\lambda}\)を\(\mu\)と\(\nu\)で偏微分している式だ。
まだ終わらない。ここで出てきた大文字のガンマは\(Christoffel\)記号もしくは\(affine\)接続係数といい、
\(\Gamma^{\lambda}_{\mu\nu}≡\displaystyle\frac{1}{2}g^{\lambda \sigma}(g_{\sigma \nu ,\mu}+g_{\sigma \mu ,\nu}-g_{\mu \nu ,\sigma}) \)
である。単純に考えても、式の中に\(\mu,\nu,\lambda,\sigma\)の4文字があるから、全て書き出せば\(4^4=256\)項あるということになる。
仮にだ、仮に理論上解けるとしても、さすがに手計算では無理があるだろう…。
ここで登場してくるのが、仮定1と仮定2である。さぁ、この式をどこまで簡単にしてくれるんだ。
▼真空条件における\(Einstein\)方程式
\(R_{\mu\nu}=0\)
ただし
\(R_{\mu\nu}≡R^{\sigma}_{\mu ,\sigma \nu}(=R^{(ct)}_{\mu ,(ct) \nu}+R^x_{\mu ,x \nu}+R^y_{\mu ,y \nu}+R^z_{\mu ,z \nu})\)
\(R^{\kappa}_{\lambda ,\mu\nu}≡\partial _{\mu}\Gamma^{\kappa}_{\lambda \nu}-\partial _{\nu}\Gamma^{\kappa}_{\lambda \mu}+\Gamma^{\tau}_{\lambda \nu}\Gamma^{\kappa}_{\tau \mu}-\Gamma^{\tau}_{\lambda \mu}\Gamma^{\kappa}_{\tau \nu}\)
\(\Gamma^{\lambda}_{\mu\nu}≡\displaystyle\frac{1}{2}g^{\lambda \sigma}(g_{\sigma \nu ,\mu}+g_{\sigma \mu ,\nu}-g_{\mu \nu ,\sigma}) \)