0でないアフィン接続係数は次の通りであった。
\(\Gamma^0_{01} =\Gamma^0_{10}=\displaystyle\frac{1}{2}\nu'\)
\(\Gamma^1_{00} =\displaystyle\frac{1}{2}e^{\nu-\lambda} ・\nu'\) \(\Gamma^1_{11} =\displaystyle\frac{1}{2}\lambda'\) \(\Gamma^1_{22} =-e^{-\lambda}r\) \(\Gamma^1_{33} =-re^{-\lambda}sin^2θ \)
\(\Gamma^2_{12} =\Gamma^2_{21} =\displaystyle\frac{1}{r} \) \(\Gamma^2_{33} =-sinθcosθ \)
\(\Gamma^3_{13} =\Gamma^3_{31} =\displaystyle\frac{1}{r}\) \(\Gamma^3_{23} = \Gamma^3_{32}=cotθ\)
「ダッシュ」は\(r\)についての微分を表しているので、\(r\)と\(\theta\)のみの関数である。
\(\nu\)と\(\lambda\)は、正式には\(\nu(\mathbf{r})\)と\(\lambda(\mathbf{r})\)である。
そしてこれを、真空の重力方程式
\(R_{\mu\nu}≡R^{\sigma}_{\mu ,\sigma \nu}=0\) (ただし \(R^{\kappa}_{\lambda ,\mu\nu}≡\partial _{\mu}\Gamma^{\kappa}_{\lambda \nu}-\partial _{\nu}\Gamma^{\kappa}_{\lambda \mu}+\Gamma^{\tau}_{\lambda \nu}\Gamma^{\kappa}_{\tau \mu}-\Gamma^{\tau}_{\lambda \mu}\Gamma^{\kappa}_{\tau \nu}\))
に代入しようとしている。
確認だが、\(Ricci\)テンソルは対称なので、重力方程式は10本の連立式である。
\(R_{00}=0 R_{01}=0 R_{02}=0 R_{03}=0\)
\(R_{11}=0 R_{12}=0 R_{13}=0\)
\(R_{22}=0 R_{23}=0\)
\(R_{33}=0\)
の連立である。一本ずつ左辺を開いていこう。
■\(Ricci\)テンソルを制覇する
解いてみてわかったのは、全ての計算過程をここに載せると、おそらく重たくて表示されない。かといって、過程を小分けして記事にするとかなりの量になる。
そこで、最初の1本目の方程式の導出だけ方法とともにきちんと書いておいて、あとは省略してしまうことにした。きっと後で見返した自分も、そのくらいであったら許してくれるであろう。
\(R_{\mu\nu}≡R^{\sigma}_{\mu ,\sigma \nu}\)
\(=\partial _{\sigma}\Gamma^{\sigma}_{\mu \nu}-\partial _{\nu}\Gamma^{\sigma}_{\mu \sigma}+\Gamma^{\tau}_{\mu \nu}\Gamma^{\sigma}_{\tau \sigma}-\Gamma^{\tau}_{\mu \sigma}\Gamma^{\sigma}_{\tau \nu}\)
これに、\((\mu , \nu)\)の値を一つずついれて、10本とも同じ作業をする。
\(R_{00}≡R^{\sigma}_{0 ,\sigma 0}\)
\(=\)\(\partial _{\sigma}\Gamma^{\sigma}_{00}\)\(-\partial _0\Gamma^{\sigma}_{0 \sigma}\)\(+\Gamma^{\tau}_{00}\Gamma^{\sigma}_{\tau \sigma}\)\(-\Gamma^{\tau}_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{\tau 0}\)
\(\sigma\)も\(\tau\)も\(0~3\)までを走っていて、それぞれ縮約されているので、展開すると第1項と第2項の中身はそれぞれ\(4\)項ずつ。第3項と第4項の中身は\(4^2=16\)項が出てくる。全部一発で展開すると、\(40\)項である。
\(R_{\mu\nu}\)が10本あるから、\(40\)項の式が\(10\)本で、トータル\(400\)項の方程式である。ここに書くと大変なことになりそうなのがお分かりだろうか。
さて、項別に見ていこう。まず第1項と第2項については\(\sigma\)の縮約を解いてやる。
(第1項) \(= \partial _0\Gamma^0_{00} + \partial _1\Gamma^1_{00} + \partial _2\Gamma^2_{00} + \partial _3\Gamma^3_{00}\)
上のアフィン接続係数一覧と照らし合わせると、
\(\Gamma^0_{00}=0 \Gamma^2_{00}=0 \Gamma^3_{00}=0\) であるから
\(= \partial _1\Gamma^1_{00}\) だけ残る。
(第2項) \(= -\partial _0\Gamma^{\sigma}_{0 \sigma}\)
に関しては、\(0\)成分で微分しているので全て消える。\(\Gamma\)は\(r\)と\(\theta\)のみの関数だからだ。
次に、第3項と第4項については\(\tau\)の縮約を解いてやる。別に\(\sigma\)から解いても構わないが、\(\tau\)を展開しさえすれば、\(\Gamma\)の一つが確定するから\(\tau\)から取りかかろうと思っただけである。なんなら両方をいっぺんにほどいて\(16\)項書き出しても間違いではない。
(第3項) \(= \Gamma^0_{00}\Gamma^{\sigma}_{0 \sigma} +\Gamma^1_{00}\Gamma^{\sigma}_{1 \sigma} +\Gamma^2_{00}\Gamma^{\sigma}_{2 \sigma} +\Gamma^3_{00}\Gamma^{\sigma}_{3 \sigma} \)
上のアフィン接続係数一覧と照らし合わせると、
\(\Gamma^0_{00}=0 \Gamma^2_{00}=0 \Gamma^3_{00}=0\) であるから
\(= \Gamma^1_{00}\Gamma^{\sigma}_{1 \sigma}\) だけ残る。
続けて\(\sigma\)も展開すると、
(第3項) \(= \Gamma^1_{00} (\Gamma^0_{10} +\Gamma^1_{11} +\Gamma^2_{12} +\Gamma^3_{13})\)
(第4項) \(= -\Gamma^0_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{00} -\Gamma^1_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{10} -\Gamma^2_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{20} -\Gamma^3_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{30} \)
アフィン接続係数一覧と照らし合わせると
\(\Gamma^2_{0*}\) と \(\Gamma^3_{0*}\) の形は全て消えるので、残るのは、
\(= -\Gamma^0_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{00} -\Gamma^1_{0 \sigma}\Gamma^{\sigma}_{10}\)
続けて\(\sigma\)も展開するが、同様にアフィン接続係数の一覧を見ると、\(\Gamma^{*}_{00}\)の形を取れるのは\(\sigma=1\)のみ、\(\Gamma^{*}_{10}\)の形を取れるのは\(\sigma=0\)のみなので、
\(= -\Gamma^0_{01}\Gamma^1_{00} -\Gamma^1_{00}\Gamma^0_{10}\)
以上より、
\(R_{00}≡R^{\sigma}_{0 ,\sigma 0}\)
\(=\)\( \partial _1\Gamma^1_{00}\) \(+ \Gamma^1_{00}(\Gamma^0_{10}+\Gamma^1_{11}+\Gamma^2_{12}+\Gamma^3_{13})\) \(-\Gamma^0_{01}\Gamma^1_{00} -\Gamma^1_{00}\Gamma^0_{10}\)
\(=\)\( \partial _1\Gamma^1_{00}\) \(+ \Gamma^1_{00}(\Gamma^1_{11}+\Gamma^2_{12}+\Gamma^3_{13})\) \(-\Gamma^0_{01}\Gamma^1_{00}\)
\(40\)項のうち、残るのは\(5\)項だけだった。ちなみに\(\Gamma\)は演算子ではなく、アフィン接続「係数」であり、その中身は上に一覧を書いた通りのものなので可換である。それを知っておくと、
\(=\)\( \partial _1\Gamma^1_{00}\) \(+ \Gamma^1_{00}( \)\(-\Gamma^0_{01}\)\(+\Gamma^1_{11}+\Gamma^2_{12}+\Gamma^3_{13})\)
とすると形はシンプルになる。
■\(affine\)接続係数を代入する
さて、あとはそれぞれの\(Christoffel\)記号(\(\Gamma\)のこと)に係数の中身を代入していくだけである。
一覧と見比べながら、機械的な作業を進めていく。
\(R_{00}=\) \(\partial_1(\displaystyle\frac{1}{2}e^{\nu-\lambda}\nu') \) \(+\displaystyle\frac{1}{2}e^{\nu-\lambda}\nu'( \)\(-\displaystyle\frac{\nu'}{2}\)\(+\displaystyle\frac{\lambda'}{2}+\frac{1}{r}+\frac{1}{r})\)
\(=\)\(\displaystyle\frac{1}{2}(\nu'-\lambda')e^{\nu-\lambda}\nu'+\frac{1}{2}e^{\nu-\lambda}\nu''\) \(+\displaystyle\frac{1}{2}e^{\nu-\lambda}\nu'(\)\(-\displaystyle\frac{\nu'}{2}\)\(+\displaystyle\frac{\lambda'}{2}+\frac{1}{r}+\frac{1}{r})\)
\(=\)… 中略
\(=\displaystyle\frac{1}{4}e^{\nu-\lambda}\left[ (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\nu' \right] \)
■他の9本の重力方程式
同様の作業をあと9本で行う。なんとかラクをする方法がないものかと思いながら、結局書き出すのが確実だと吹っ切れて、残り9本も全展開してしまった。文字を置いたまま処理をするのが本来なのであろうが、一つでも数え落とすと以降の計算が全て無駄になるため、2時間ほどひたすら式を追い続けた。ほとんど脳を使わない機械的な作業だった。
その全結果がこちら。
\(R_{01}=0\)
\(R_{02}=0\)
\(R_{03}=0\)
\(R_{11}=\displaystyle\frac{1}{4}\left[ (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\lambda' \right] \)
\(R_{12}=0\)
\(R_{13}=0\)
\(R_{22}=e^{-\lambda}\left[\displaystyle\frac{r}{2}\lambda'-\frac{r}{2}\nu'-1 \right]+1\)
\(R_{23}=0\)
\(R_{33}=R_{22}sin^2\theta\)
結果的に重力方程式10本のうちほとんどが消えてしまった。生き残った4本を連立すれば、それが今考えている重力方程式の中身の部分である。
4本あるとは言え、単なる連立方程式なら解けそうな気もする。少なくともここまでの計算よりはラクであると信じたい。
まだまだ計算は続く。