■静的・球対称・真空条件の重力方程式
ここまで長い計算をしていたが、結論として、静的で球対称という条件のみから、\(Ricci\)テンソルを計算して、それは10本の重力方程式のうち生き残るのが4本だけ、ということだった。
これに真空条件を適用して、右辺を\(=0\)として解くのが\(Schwarzschild\)解の指針であるが、右辺にきちんと物質を指定して解けば、別の解が出る。それは今度にしよう。ここまできちんと解くと、物理的な意味がつかめてきたから、指針と式の構造が少し分かってきた。
まとめると、左辺が、静的・球対称の条件で変形された4本の式で、右辺の\(=0\)が真空という意味である。
あとは、この4本の連立式を解くだけである。3式目と4式目は右辺を\(=0\)にすることで同値となるから、実質3本の連立だけ解けばいい。
▼静的・球対称・真空条件の重力方程式
\(R_{00}=\displaystyle\frac{1}{4}e^{\nu-\lambda}\left[ (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\nu' \right]=0 \) ――①
\(R_{11}=\displaystyle\frac{1}{4}\left[ (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\lambda' \right]=0 \) ――②
\(R_{22}=e^{-\lambda}\left[\displaystyle\frac{r}{2}\lambda'-\frac{r}{2}\nu'-1 \right]+1=0\) ――③
\(R_{33}=R_{22}sin^2\theta=0\) ――④
■さあ解こう!(①②式の処分)
①②から
\(\displaystyle (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\nu' =0 \)
\(\displaystyle (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\lambda' =0 \)
なので、辺々引くとすぐに
\(\nu'+\lambda'=0\) ――⑤
まできれいにできる。この形はあとで使えそうなので、⑤としておこう。
さて、この連立式、そもそもどこに向かって進んでいるのか。分からなくなったら式変形の初めから読み直さなければならない。
シュワルツシルト解の導出2 まで遡ると、
\(ds^2=-e^{\nu(\mathbf{r})}d(ct)^2 + e^{\lambda(\mathbf{r})}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)
つまり
\(g_{\mu\nu}= \begin{pmatrix} -e^{\nu(\mathbf{r})} & 0 & 0 & 0 \\ 0 & e^{\lambda(\mathbf{r})} & 0 & 0 \\ 0 & 0 & r^2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & r^2sin^2θ \end{pmatrix}\)
の、\(-e^{\nu(\mathbf{r})}\)と\(e^{\lambda(\mathbf{r})}\)を仮置きしたままだったので、この中身を決定するための式変形をしていたようである。
もはや式変形が長すぎて、迷子になりそうだ。
そうすると、\(\nu'+\lambda'=0\)ではまだまだ途中じゃないか。ダッシュ(\(r\)微分)を取るために、\(r\)で積分してやって、生身の\(\nu\)と\(\lambda\)を手に入れよう。
\(\displaystyle\int_r(\nu'+\lambda')dr=C_0\) \((C_0:const)\)
\(\nu+\lambda=C\) \(C:const\)
同じくシュワルツシルト解の導出2をよく読んでみると、無限遠ではミンコフスキー時空(平坦な時空)として考えることにしていたようだ。
\(\displaystyle \lim_{ r \to \infty }\lambda(\mathbf{r})=0\)
\(\displaystyle \lim_{ r \to \infty }\nu(\mathbf{r})=0\)
なので、無限遠で等式を成立させるために、積分定数は\(0\)として良さそうだ。
\(\displaystyle \lim_{ r \to \infty }(\nu+\lambda)=0\)
よって
\(\nu+\lambda=0\)
■さあ解こう!(③式の処分)
③より
\(e^{-\lambda}\left[\displaystyle\frac{r}{2}\lambda'-\frac{r}{2}\nu'-1 \right]+1=0\)
\(\nu'+\lambda'=0\)なので
\(e^{-\lambda}\left[\displaystyle\frac{r}{2}\lambda'-\frac{r}{2}\lambda'-1 \right]+1=0\)
\(e^{\lambda}(r\lambda'-1)=-1\)
ここで私には思いつかなかった式変形をする。
この形は慣れている人からすると、すぐに微分形になっていることに気付くようだ。
\(\partial_r(re^{-\lambda})=1\)
よって積分して、
\(re^{-\lambda}=r+C\) \(C:const\)
\(e^{-\lambda}=1+\displaystyle\frac{C}{r}\) \((=e^{\nu})\) \((∵\nu+\lambda=0)\)
これでやっと導出2で置いた文字を処分することができた。
\(ds^2=-e^{\nu(\mathbf{r})}d(ct)^2 + e^{\lambda(\mathbf{r})}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)
に代入して
\(ds^2=-(1+\displaystyle\frac{C}{r})d(ct)^2 + (1+\displaystyle\frac{C}{r})^{-1}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)
あとは積分定数を処分するだけである。
■積分定数を処分
いま
\(g_{00}=-(1+\displaystyle\frac{C}{r})\)
と求まったが、\(Newton\)近似を行うと、
\(g_{00}≒-1-\displaystyle\frac{2\phi}{c^2}\)
であるから、
\(-(1+\displaystyle\frac{C}{r})=-1-\displaystyle\frac{2\phi}{c^2}\)
\(C=\displaystyle\frac{2\phi r}{c^2}\)、 \(\phi=\displaystyle\frac{c^2C}{2r}\)
また、\(\phi=-\displaystyle\frac{GM}{r}\)に対応していたから
\(-\displaystyle\frac{GM}{r}=\displaystyle\frac{c^2C}{2r}\)
\(C=-\displaystyle\frac{"GM}{c^2}\)
でなければならない。
よって最終的に表れた線素は、
\(ds^2=-(1-\displaystyle\frac{2GM}{c^2r})d(ct)^2 + (1-\displaystyle\frac{2GM}{c^2r})^{-1}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)
\(c=1、G=1\)という単位系をとれば、
\(ds^2=-(1-\displaystyle\frac{2M}{r})d(ct)^2 + (1-\displaystyle\frac{2M}{r})^{-1}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)
やっと求まった。これが解である。
▼\(Schwarzschild\)解
\(ds^2=-(1-\displaystyle\frac{2M}{r})d(ct)^2 + (1-\displaystyle\frac{2M}{r})^{-1}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)