■量子力学での運動方程式
▼\(Ehrenfest\)の定理
粒子の運動は確率波の波束で表され、その波束の重心は粒子が古典力学に従うとした場合の運動に一致する
\(m \displaystyle\frac{d^2}{dt^2}<x>=\frac{d}{dt}<p>=<F>\)
位置と運動量の定義ができたということは、古典的な運動方程式も同じように立式できるのではないだろうか。
古典的な力学での運動方程式は\(m\ddot{x}=F\)で表せた。この左辺における\(x\)が、量子力学では観測のたびに値が違うものになってしまって定まらなかったものを、期待値(平均の位置)ととらえることで、古典的な力学と同様に扱えるようになる、という論法だった。
だから運動方程式の書き換えも、位置や速度、運動量を導出したのと同じように考えればいい。
一つは、速度の期待値が求まったから、これを時間微分してやって加速度を求めてしまう方法、もう一つは、運動量の期待値が求まったから、運動量の時間微分をしてやる方法が考えられる。
どちらも同等のものである。質量\(m\)を計算の後でかけるか、先にかけるかの違いにすぎない。
とりあえず、運動量の期待値を時間微分する方法で式を追ってみることにした。
\(<p>=\displaystyle\int \psi^* (-i\hbar \frac{\partial}{\partial x}) \psi dx\) より
\(\displaystyle\frac{d}{dt}<p>=\frac{d}{dt}\displaystyle\int \psi^* (-i\hbar \frac{\partial}{\partial x})\psi dx\)
\(=\displaystyle \int \left[ \frac{\partial \psi^*}{\partial t}(-i\hbar \frac{\partial}{\partial x})\psi + \psi^*(-i\hbar \frac{\partial}{\partial x})\frac{\partial \psi}{\partial t}\right] dx\)
ここで再び、(左辺と右辺を入れ替えた)\(Schr\ddot{o}dinger\)方程式を持ってくる
\(i\hbar \displaystyle\frac{\partial\psi}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi}{ \partial x^2}+V\psi\)
\(-i\hbar \displaystyle\frac{\partial\psi^*}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi^*}{ \partial x^2}+V\psi^*\)
の左辺を\(\displaystyle\frac{\partial\psi}{\partial t}\)と\(\displaystyle\frac{\partial\psi^*}{\partial t}\)の形に移項して、もとの式に代入すると、
\(=\displaystyle \int \left[ (- \frac{1}{i \hbar } ) (- \frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi^*}{\partial x^2}+V\psi^* )(-i\hbar \frac{\partial}{\partial x})\psi + \psi^*(-i\hbar \frac{\partial}{\partial x})( \frac{1}{i \hbar } ) (- \frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi^*}{\partial x^2}+V\psi^* )\right] dx\)
\(=\displaystyle \int \left[ (- \frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi^*}{\partial x^2}+V\psi^* )( \frac{\partial}{\partial x})\psi + \psi^*(-\frac{\partial}{\partial x}) (- \frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi^*}{\partial x^2}+V\psi^* )\right] dx\)
\(=\displaystyle \int \left[- \frac{\hbar^2}{2m} \left( (\frac{\partial^2 \psi^*}{\partial x^2})(\frac{\partial}{\partial x}) \psi-\psi^*(\frac{\partial}{\partial x})(\frac{\partial^2 \psi^*}{\partial x^2}) \right) + V\psi^*(\frac{\partial}{\partial x})\psi - \psi^*(\frac{\partial}{\partial x})(V\psi )\right] dx\)
この式の第1項にあるややこしい2階微分は、前回の運動量の定義を導出したときの計算と同様に2階部分積分すると消去できるので、結果的に式の後半しか残らない。さすがにもう一回は計算を追わなくてもいいだろう。
\(=\displaystyle \int \left[V\psi^*(\frac{\partial}{\partial x})\psi - \psi^*(\frac{\partial}{\partial x})(V\psi )\right] dx\)
\(=\displaystyle \int \left[V\psi^*\frac{\partial}{\partial x}\psi - \psi^*\frac{\partial V}{\partial x}\psi-\psi^*V\frac{\partial}{\partial x}\psi\right] dx\)
第1項と第3項は消せる。\(V\phi^*\)と\(\phi^*V\)は単なる関数であって演算子ではないので可換。
\(=\displaystyle \int \psi^*(-\frac{\partial V}{\partial x})\psi dx\)
\(=\displaystyle \int \psi^* F(x)\psi dx\)
\(≡<F(x)>\)
これで終了。
これも難しい物理を追いかけているように見えるが、運動量を時間微分したら力になる、ということを量子力学バージョンで決めたにすぎない。
何度も言うが、式の根っこにある波動関数\(\phi\)が、そもそも仮定のままで式変形を続けているので、実際の物理現象が、観測される粒子の位置の期待値、という、あるのかないのか分からないような概念が、この式に従っているかどうかは不明である。
実験をしてみて、きちんと力の期待値と運動量の期待値に整合性がとれれば、初めて、この式は意味を持つことになる。
いくら優秀な物理学者が計算したとしても、人類が \(≡<F(x)>\) と定義した瞬間に自然界がそれに従ってくれるわけではない。
探しても見当たらなかったが、実験実証した先人が誰かしらいて、結果的に何も都合悪いことはなかったんだろう。おそらく。