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ライスナー・ノルドシュトロム解の導出

■重力方程式の加工

 

\(Einstein\)方程式は

 

 \(G^{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}T^{\mu\nu}\)

 

であった。この左辺にあるアインシュタインテンソルを書き出してやると、

 

 \(R^{\mu\nu}-\displaystyle\frac{1}{2}g^{\mu\nu}R=\frac{8\pi G}{c^4}T^{\mu\nu}\)

 

であった。そして、左辺第二項を、ややこしい計算のもと、移項してやると、

 

 \(R^{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}(T^{\mu\nu}-\frac{1}{2}g^{\mu\nu}T)\)

 

となる。 添字の上下は「双対性」があるため、両辺が揃ってさえいればどちらでもよいので、下ろしておくことにする。

 

 \(R_{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}(T_{\mu\nu}-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}T)\)

 

そして、この右辺をゴソッと\(0\)にして導出したのがシュワルツシルト解であったが、今回は電荷を考えるので、\(0\)にはせずに置いておく。ただ、丸ごと残したのでは厳密解を得ることができないから、妥協できるところまで条件を緩めていって、いい具合に解を探そう。

 

 

■エネルギー運動量テンソル

 

 ストレス・エネルギーテンソルとも言う。エネルギー運動量テンソル自体は一般相対論ではなく、特殊相対論の話である。相対論的電磁気学の中で、マクスウェル方程式を変形しているうちにテンソルに行きつき、これを相対論的力学でのエネルギー運動量テンソルと同じように、電磁場のエネルギー運動量テンソルと呼ぶことにした。

 

 なかなか優秀なテンソルで、電場、磁場はもちろんのこと、電磁場やフレミングの法則、ローレンツ力など、電磁気で必要な情報がたった一つのテンソルの中に盛り込まれているから、テンソルを基本式として考えることができるだけの数学的手腕があれば、電磁気学はいとも簡単に扱える。

 

 …はずであるが、その「数学的手腕」なるものを私は持ち合わせていないので、古典的な電磁気学を考えたいときは、マクスウェル方程式を思い出すところからでないと手出しができない。

 きっと、この記事を読む大半の人もそうであろうと思っている。テンソルを自在に使いこなせるような世界はまだまだ私からすると別格だ。

 

 電磁場のエネルギー運動量テンソルを、磁場が\(B=0\)として書き出すと以下のようになる。

 

 \(T^{\mu\nu}= \begin{pmatrix}  \frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2 & 0 & 0 & 0 \\   & -\varepsilon_0 E_x^2-\frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2 & -\varepsilon_0 E_x E_y &  -\varepsilon_0 E_x E_z  \\   &   & -\varepsilon_0 E_y^2-\frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2  &  -\varepsilon_0 E_y E_z  \\  対称 &  &  & -\varepsilon_0 E_z^2-\frac{1}{2}\varepsilon_0 E^2 \end{pmatrix}\)

 

 

■エネルギー運動量テンソルのトレース

 

電磁場のエネルギー運動量テンソル\(T^{\mu \nu}\)を、電磁場テンソル\(F^{\mu \nu}\)を使って表すと、次のようになる。

 

 \(T^{\alpha \beta}=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{4}g^{\alpha \beta} F^{\mu \nu}F_{\mu \nu} - F^{\alpha \mu}F^\beta_\mu \right) \)

 

そして、そのトレースを考えると、

 

 \(T≡T^\alpha_\alpha=g_{\alpha \beta}T^{\alpha \beta}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta}g^{\alpha \beta} F^{\mu \nu}F_{\mu \nu} - g_{\alpha \beta}F^{\alpha \mu}F^\beta_\mu \right) \)

 

  \(=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta}g^{\alpha \beta} F^{\mu \nu}F_{\mu \nu} - F^{\alpha \mu}F_{\alpha \mu} \right) \)

 

  \(=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{4}・4・ F^{\mu \nu}F_{\mu \nu} - F^{\alpha \mu}F_{\alpha \mu} \right) \)

 

  \(=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( F^{\mu \nu}F_{\mu \nu} - F^{\alpha \mu}F_{\alpha \mu} \right) \)

 

  \(=0\)

 

となる。これは都合がいいではないか。

つまり、今回考えるべき重力方程式は、

 

 \(R_{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}\)

 

であるといえよう。初めからすると幾分かはマシではあるが、\(\mu\)と\(\nu\)の組み合わせによって、また今回も10本の方程式の計算がひたすら続くことが目に見える。

 

 

▼真空・球対称・帯電 における重力方程式

 \(R_{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}\)