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ライスナー・ノルドシュトロム解の導出2

■左辺を掘り出す

 

▼真空・球対称・帯電 における重力方程式

 \(R_{\mu\nu}=\displaystyle\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}\)

 

 この方程式を解けばいい、というところまで進んでいた。シュワルツシルト解と何が違うのかといえば、ずばり右辺に電荷要素がある点だけである。

つまり、左辺はシュワルツシルト解と何ら変わることなく、同じ導出をすることになるから、これは何とラクではないか。

 

 せっかくなので、サマリーとして、左辺の\(Ricci\)テンソルをもう一度引っ張り出してこようと思う。

 

 シュワルツシルト解を最初に導出するときは、簡単のために、静的・真空・球対称という条件の下で話を進めてきたが、その後、バーコフの定理で、静的条件を外して、真空・球対称だけの条件でも同じ結果となることが分かった。

 せっかくだからバーコフの定理を使って、僅かでも一般化に近い方の条件で導出していこう。

 

 

まず、球対称な時空の計量を、

 

 \(ds^2=-e^{\nu(t,\mathbf{r})}d(ct)^2 + e^{\lambda(t,\mathbf{r})}dr^2 + r^2 dθ^2 + r^2sin^2θ dφ^2\)

 

としておく。計量には、対角成分しかないので、対角4成分×4種類の微分、トータル16種類を計算してみると、\(0\)でないものが7種類残り、次のような式となる。

 

 \(g_{00,0}=\partial_0(-e^{\nu})=-\dot{\nu}e^{\nu}\)

 \(g_{00,1}=\partial_1(-e^{\nu})=-\nu'e^{\nu}\)

 \(g_{11,0}=\partial_0e^{\lambda}=\dot{\lambda}e^{\lambda}\)

 \(g_{11,1}=\partial_1e^{\lambda}=\lambda'e^{\lambda}\)

 \(g_{22,1}=\partial_1r^2=2r\)

 \(g_{33,1}=\partial_1r^2sin^2θ=2rsin^2θ\)

 \(g_{33,2}=\partial_2r^2sin^2θ=2r^2sinθcosθ\)

 

これをアフィン接続係数(クリストッフェル記号)の式

 

 \(\Gamma^{\lambda}_{\mu\nu}=\displaystyle\frac{1}{2}g^{\lambda \lambda}(g_{\lambda \nu ,\mu}+g_{\lambda \mu ,\nu}-g_{\mu \nu ,\lambda}) \)

 

に代入してやる。この式は、計量を置いた時点で対角成分しか持たないので、頭の\(g\)は\(g^{\lambda \lambda}\)として、すでに簡略化している。

同じく、微分した結果\(0\)にならないものだけを書き出していくと、トータルで次のような17種類が残る。

 

 \(\Gamma^0_{00}=\displaystyle\frac{\dot{\nu}}{2}\)

 \(\Gamma^0_{01} =\Gamma^0_{10}=\displaystyle\frac{1}{2}\nu'\)

 \(\Gamma^0_{11}=\displaystyle\frac{\dot{\lambda}}{2}e^{\lambda-\nu}\)

 

 \(\Gamma^1_{00} =\displaystyle\frac{1}{2}e^{\nu-\lambda} ・\nu'\)

 \(\Gamma^1_{01}=\Gamma^1_{10}=\displaystyle\frac{\dot{\lambda}}{2}\)

 \(\Gamma^1_{11} =\displaystyle\frac{1}{2}\lambda'\)

 \(\Gamma^1_{22} =-e^{-\lambda}r\)

 \(\Gamma^1_{33} =-re^{-\lambda}sin^2θ \)

 

 \(\Gamma^2_{12} =\Gamma^2_{21} =\displaystyle\frac{1}{r} \)

 \(\Gamma^2_{33} =-sinθcosθ \)

 

 \(\Gamma^3_{13} =\Gamma^3_{31} =\displaystyle\frac{1}{r}\)

 \(\Gamma^3_{23} = \Gamma^3_{32}=cotθ\)

 

これを、次のように定義されるリッチテンソル

 

 \(R_{\mu\nu}≡R^{\sigma}_{\mu ,\sigma \nu}=\partial _{\sigma}\Gamma^{\sigma}_{\mu \nu}-\partial _{\nu}\Gamma^{\sigma}_{\mu \sigma}+\Gamma^{\tau}_{\mu \nu}\Gamma^{\sigma}_{\tau \sigma}-\Gamma^{\tau}_{\mu \sigma}\Gamma^{\sigma}_{\tau \nu}\)

 

に代入してやると

 

 \(R_{00}=\displaystyle\frac{1}{4}e^{\nu-\lambda}\left[ (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\nu' \right] \) \(-\displaystyle\frac{1}{4} \left[ (\dot{\lambda})^2-\dot{\nu}\dot{\lambda}+2\ddot{\lambda} \right] \)

 \(R_{01}=\displaystyle\frac{\dot{\lambda}}{r}\)

 \(R_{02}=0\)

 \(R_{03}=0\)

 

 \(R_{11}=-\displaystyle\frac{1}{4}\left[ (\nu')^2-\lambda' \nu' +2\nu''+\frac{4}{r}\lambda' \right] \) \(+\displaystyle\frac{1}{4}e^{\lambda-\nu} \left[ 2(\dot{\lambda})^2-\dot{\nu}\dot{\lambda}+2\ddot{\lambda} \right] \)

 \(R_{12}=0\)

 \(R_{13}=0\)

 

 \(R_{22}=e^{-\lambda}\left[\displaystyle\frac{r}{2}\lambda'-\frac{r}{2}\nu'-1 \right]+1\)

 \(R_{23}=0\)

 

 \(R_{33}=R_{22}sin^2\theta\)

 

となり、5本の方程式だけが残る。これが左辺の全成分である。

リッチテンソルは対称であるから、16成分のうち10成分が分かれば、それで充分であった。

 

あとは、これと対になるエネルギー運動量テンソル\(T_{\mu \nu}\)をいちいち全成分出してやって、つなぐ必要がある。

 

この時点では、リッチテンソルの計算結果が\(0\)になった成分も捨てるわけにはいかない。仮にエネルギー運動量テンソルの方が何らかの式を持つのであれば、単に左辺が\(0\)、右辺が式となるような方程式として生き残ってしまうからだ。

 

シュワルツシルト解を導出するときは右辺が\(0\)であることが初めから分かっていたから、リッチテンソルの全\(10\)成分を出した時点で\(0\)となる式は捨て去ってしまったが、今回は取っておこう。

 

また、バーコフの定理からシュワルツシルト解に持っていくことができたのも、右辺を\(0\)としていたおかげで\(R_{01}=0\)の式から、\(\dot{\lambda}=0\)なりを持ってこれたが、今回はそれもできない。

 

電荷がある状態では、バーコフが言う、真空・球対称であれば、唯一解としてシュワルツシルト解を得ることができる、というルールは自明ではない。