■添え字の上げ下げ
添え字の上げ下げは、当たり前には行えない。特に、ミンコフスキー計量(平坦な場合の計量)と違って、一般的な計量を考えるときには、頑張って計算しなければいけないのだ。
\(F^{\mu \nu}=g^{\mu \alpha}g^{\nu \beta}F_{\alpha \beta}\)
としておいて、添え字を一つずつ下げていく。これを全て書き出すと、計算の指針がクリアになる。
と同時に、マセマティカで十分だということにも気づく。専門家はきっとマセマティカを使っているに違いない。そうすると途中式が省略されるのも納得できる。
いま、(\(c=1\)としておいて)計量を
\(ds^2=-e^{\nu}dt^2+e^{\lambda}dr^2+r^2d\theta ^2 +r^2 sin^2 d\phi ^2\)
と置いていた
\(g_{\mu \nu}=\begin{pmatrix} -e^{\nu} &0 & 0 & 0 \\ 0 & e^{\lambda} & 0 & 0 \\ 0 & 0 & r^2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & r^2sin^2\theta \end{pmatrix}\)
から
\(g^{\mu \nu}=\begin{pmatrix} -e^{-\nu} &0 & 0 & 0 \\ 0 & e^{-\lambda} & 0 & 0 \\ 0 & 0 & r^{-2} & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \frac{1}{r^2sin^2\theta} \end{pmatrix}\)
であったから、これを使って、
\(F^{\mu\nu}= \begin{pmatrix} -e^{-\nu} &0 & 0 & 0 \\ 0 & e^{-\lambda} & 0 & 0 \\ 0 & 0 & r^{-2} & 0 \\ 0 & 0 & 0 & (r^2sin^2\theta)^{-1} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 &-E_r & 0 & 0 \\ E_r & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 &0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -e^{-\nu} &0 & 0 & 0 \\ 0 & e^{-\lambda} & 0 & 0 \\ 0 & 0 & r^{-2} &0 \\ 0 & 0 & 0 & (r^2sin^2\theta)^{-1} \end{pmatrix} \)
とするのが、本来の計算。うしろから順に計算を追っていくと、まず
\(F^{\mu\nu}= \begin{pmatrix} -e^{-\nu} &0 & 0 & 0 \\ 0 & e^{-\lambda} & 0 & 0 \\ 0 & 0 & r^{-2} & 0 \\ 0 & 0 & 0 & r^2sin^2\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 &-E_re^{-\lambda} & 0 & 0 \\ -E_re^{-\nu} & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)
となり、さらに計算を進めると、
\(F^{\mu\nu}=\begin{pmatrix} 0 &E_re^{-(\nu+\lambda)} & 0 & 0 \\ -E_re^{-(\nu+\lambda)} & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 &0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)
とできる。手で追ってみると分かるが、計算自体はマセマティカで十分だ。ただ、どうやって添え字の上げ下げをするのかという方法は知っておかないと、マセマティカすら通せない。
ちなみに、これがミンコフスキー計量での操作であれば、急に簡単になる。一般的な電磁場テンソルのままで計算しても、
\(F^{\mu \nu}=\eta^{\mu \alpha}\eta^{\nu \beta}F_{\alpha \beta}\)
\(F^{\mu\nu}= \begin{pmatrix} -1 &0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 & -E_x & -E_y & -E_z \\ E_x & 0 & B_z & -B_y \\ E_y & -B_z & 0 & B_x \\ E_z & B_y & -B_x & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 &0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \)
\(F^{\mu\nu}= \begin{pmatrix} 0 & E_x & E_y & E_z \\ -E_x & 0 & B_z & -B_y \\ -E_y & -B_z & 0 & B_x \\ -E_z & B_y & -B_x & 0 \end{pmatrix} \)
こうである。\(0\)成分だけ符号が対称に入れ替わり、\(1\)~\(3\)成分はそのまま残る形になる。