■電磁場テンソル
\(c=1\)とした単位系での電磁場テンソルでは、電場成分の分母につく\(c\)を省略できるので、少しシンプルな書き方になって、次のようになる。
\(F_{\mu\nu}= \begin{pmatrix} 0 & -E_x & -E_y & -E_z \\ E_x & 0 & B_z & -B_y \\ E_y & -B_z & 0 & B_x \\ E_z & B_y & -B_x & 0 \end{pmatrix}\)
見ての通り、\(0\)成分が関わるところにしか電場の影響は及ぼされず、逆に、\(0\)成分が関わらないところのみで磁場成分が存在している。これは幸いである。
まず、今、帯電だけを考えているから、磁場成分は丸々落としていい。
\(F_{\mu\nu}= \begin{pmatrix} 0 & -E_x & -E_y & -E_z \\ E_x & 0 & 0 & 0 \\ E_y & 0 & 0 &0 \\ E_z & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}\)
これを、球対称で考えてやるから、電場成分を球座標に移項してやる。しかし、球対称だから第2成分\(\theta\)と第3成分\(\phi\)は\(0\)としても問題ないだろう。
\(F_{\mu\nu}= \begin{pmatrix} 0 &- E_r & 0 & 0 \\ E_r & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 &0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}\)
そして、この先の計算のややこしさを考えると、添え字を上付きにしたタイプの電磁場テンソルも一覧表がほしい。
\(F^{\mu \nu}=g^{\mu \alpha}g^{\nu \beta}f_{\alpha \beta}\)
としておいて、添え字を一つずつ下げていく。この程度の計算は、もはや専門家にとっては当たり前なのかもしれないが、結果しか載っていないものが多い。しかし、一般的な計量で添え字を上げ下げするのは、本来は大変な計算のはずだ。
この導出過程はRN解の導出3.1にまとめた。
結果的には、次のようになった。
\(F_{\mu\nu}= \begin{pmatrix} 0 &E_re^{-(\nu+\lambda)} & 0 & 0 \\ -E_re^{-(\nu+\lambda)} & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 &0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}\)
これを”一覧表”として、この先の計算に使うことにしよう。
■電磁場のエネルギー運動量テンソル
さあ、重力方程式の右辺を書き出そう。右辺のうちの半分は、磁場がないとしてトレースを取ることで消えてなくなった。しかし、残りのエネルギー運動量テンソルもなかなかの項数を含んでいる。そこで、球対称として計量も電磁場テンソルもシンプルな形のものを使うことにしたから、今のところ、なんとか計算を進めることができているのであった。
電磁場のエネルギー運動量テンソルは次の通り
\(T^{\alpha \beta}=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{4}g^{\alpha \beta} F^{\mu \nu}F_{\mu \nu} - F^{\alpha \mu}F^\beta_\mu \right) \)
であるが、添え字が上付きだと処理ができないので、「双対性」を使って、まるごと添え字の上下を入れ替えてしまおう。添え字の上げ下げを、一つずつ操作するのは大変であるが、全部一括であれば機械的に入れ替えても問題はない。
\(T_{\alpha \beta}=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta} F_{\mu \nu}F^{\mu \nu} - g_{\beta \nu}F_{\alpha \mu}F^{\nu \mu} \right) \)
ついでに、第二項の添え字が上下両方についているのも、使い勝手がいいように修正した。
もはや、電磁場テンソル\(F\)には\(F_{01}\)と\(F_{10}\)としか残っていないから、それ以外の成分はもう落としてしまっておこうと思う。
第一項
\( \displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta} F_{\mu \nu}F^{\mu \nu} \)
\(=\displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta} (F_{\mu 0}F^{\mu 0} + F_{\mu 1}F^{\mu 1})\)
\(=\displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta} (F_{10}F^{10} + F_{01}F^{01})\)
\(F_{10}=-F_{01}\)、\(F^{10}=-F^{01}\)なので
\(=\displaystyle\frac{1}{4}g_{\alpha \beta}・ 2F_{01}F^{01}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}g_{\alpha \beta} F_{01}F^{01}\)
第二項
\(g_{\beta \nu}F_{\alpha \mu}F^{\nu \mu}\)
\(=g_{\beta \nu}F_{\alpha 0}F^{\nu 0} + g_{\beta \nu}F_{\alpha 1}F^{\nu 1} \)
\(=g_{\beta 1}F_{\alpha 0}F^{10} + g_{\beta 0}F_{\alpha 1}F^{01} \)
よって
\(T_{\alpha \beta}=\displaystyle\frac{1}{\mu_0} \left( \displaystyle\frac{1}{2}g_{\alpha \beta} F_{01}F^{01} - g_{\beta 1}F_{\alpha 0}F^{10} - g_{\beta 0}F_{\alpha 1}F^{01} \right) \)
となった。
あとは、\(\alpha\)と\(\beta\)についてそれぞれ書き出してやれば、重力方程式の左辺にいるリッチテンソルとペアにある右辺のエネルギー運動量テンソルがわかる。これらを10成分ともつないでやれば、10本の連立方程式ができるから、それを解いていく、という指針である。