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電場

■電場

 電場とは、静電気力(\(Coulomb\)力)が働く空間のことをいう。理学を専門にする人は「電場」というが、工学の用語として使うときは「電界」という。同じ理由で「磁場」「磁界」という二つの用語も分野が理学なのか工学なのかで使い分けるようだが、中学理科では磁石を「磁界」で習い、高校物理では静電気を「電場」で習う統一感の無さには違和感しかない。

 

 電場の向きと大きさは、静電気力が働く空間に\(+1C\)の「試験電荷」を置いたとき、その試験電荷が受けるクーロン力の向きと大きさによって定義される。

 つまり、数式的な話で言えば、クーロンの法則で考えている2つの電荷のうち、1つの電気量を\(+1\)としてしまえばいいだけの話である。

 

クーロンの法則の式は

 

  \(\boldsymbol{F}=\displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{q_1q_2}{r^2}\frac{\boldsymbol{r}}{r}\)

 

であったから、ここから片方の電荷だけ大きさを\(1C\)に変えて、ついでに左辺も電場\(E\)としてやれば、電場の式は

 

 \(\boldsymbol{E}=\displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{q}{r^2}\frac{\boldsymbol{r}}{r}\)

 

となる。

 定義から、\(1C\)の電荷に及ぼす力の大きさを電場の大きさと決めているから、\(Q[C]\)の電荷に及ぼす力の大きさは、電場の大きさを\(Q\)倍してやるといいということになる。

 

 \(\boldsymbol{F}=\displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{Qq}{r^2}\frac{\boldsymbol{r}}{r}\)

 

 \(\boldsymbol{F}=Q\boldsymbol{E}\)

 

■電場の重ね合わせ

 電場も静電気力と同じように重ね合わせをすることができる。

クーロン力を重ね合わせたときの式を持ってくる。

 

 \(\boldsymbol{F_i}=\displaystyle \sum_{j=1}^N \displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{q_iq_j}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|^2}・\frac{\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|} \)

 

 

これを少し変形すると、\(q_i\)の電荷はシグマの影響を受けないから、シグマの外に出すことができて、

 

 \(\boldsymbol{F_i}=q_i\displaystyle \sum_{j=1}^N \displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{q_j}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|^2}・\frac{\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|} \)

 

ここで、\(q_i\)をゼロでないとして両辺から割ってやると、

 

 \(\displaystyle\frac{\boldsymbol{F_i}}{q_i}=\displaystyle \sum_{j=1}^N \displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{q_j}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|^2}・\frac{\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|} \)

 

となる。このとき、左辺が\(i\)番目の電荷がいる点における合成電場\(\boldsymbol{E_i}\)を指していて、右辺も\(j\)番目の電荷が作り出す電場の合計量を意味する式となっているから、

 

\(\boldsymbol{E_i}=\displaystyle \sum_{j=1}^N \displaystyle\frac{1}{4\pi \varepsilon_0}・\displaystyle\frac{q_j}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|^2}・\frac{\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}}{|\boldsymbol{r_i}-\boldsymbol{r_j}|} \)

 

つまり、

 

\(\boldsymbol{E_i}=\displaystyle \sum_{j=1}^N \boldsymbol{E_j} \)

 

となり、電場に関しても重ね合わせの原理が成立することを意味している。