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回転運動の運動方程式

■回転運動の運動方程式

 前回の話、等角加速度回転運動で、以下の公式を導くことができた。

 

 ▼加速度と角加速度の関係

 \(a=r\beta\)

 

 ▼等角加速度回転運動の3公式

 \(\omega=\omega_0+\beta t \)

 \(\theta=\omega_0t+\displaystyle\frac{1}{2}\beta t^2\)

 \(\omega^2-\omega^2_0=2\beta \theta\)

 

これらの公式を、運動方程式に融合してみようと思う。

 

 \(ma=F\) 

の両辺に回転半径\(r\)をかけると

 \(mar=Fr\)

ここで、\(a=r\beta\)であるから

 \(m・r\beta・r=Fr\)

 \(mr^2\beta=Fr\)

 

ここで、右辺の\(Fr\)は力のモーメント\(N\)である。

また、左辺の\(mr^2\)を\(I\)と表記することにして左辺と右辺を入れ替えると

 

 \(N=I \beta\)

 

となる。ここでまとめた\(I\)のことを、「慣性モーメント」と呼び、「剛体の回転のしにくさ」を表す量となる。

また、この式を「回転運動の運動方程式」という。

 

▼慣性モーメント

 \(I=mr^2 [kg・m^2]\)

 

▼回転運動の運動方程式

 \(N=I \beta\)

 (力のモーメント)=(慣性モーメント)×(角加速度)

 

 

 

例題

図のように、半径\(r[m]\)、慣性モーメント\(I[N・m]\)、の滑車に糸を通して、質量\(M\)、\(m[kg]\)\((M>m)\)のおもり\(A\)、\(B\)を取り付けた。滑車の摩擦はないものとする。

 

(1) おもりの加速度\(a[m/s^2]\)を求めよ。

(2) 滑車の角加速度\(\beta[rad/s^2]\)を求めよ。

(3) おもり\(A\)とつながる糸の張力\(T_1\)を求めよ。

(4) おもり\(B\)とつながる糸の張力\(T_2\)を求めよ。

 

 

[解答]

 おもり\(A\)、\(B\)、滑車のそれぞれについて運動方程式を立てると、

  [A]   \(Ma=Mg-T_1\)

  [B]   \(ma=T_2-mg\)

  [滑車]  \(I \beta = T_1r-T_2r\)

 

 また、加速度と角加速度の関係より

  \(a= r \beta\)

 であるから、[A]、[B]に代入すると

 

  [A] \(Mr \beta =Mg-T_1\)

  [B] \(mr \beta = T_2-mg\)

 よって

  [A] \(T_1=Mg-Mr\beta\)

  [B] \(T_2=mr\beta+mg\)

 

 これらを[滑車]の式に代入すると

  \(I\beta=Mgr-Mr^2\beta-mr^2\beta-mgr\)

  \(I\beta=(M-m)gr-(M+m)r^2\beta\)

  \([I+(M+m)r^2]\beta=(M-m)gr\)

 よって

 

  \(\beta=\displaystyle\frac{(M-m)gr}{(M+m)r^2+I} [rad/s^2]\) …(2)

 

 また

 

  \(a=\displaystyle\frac{(M-m)gr^2}{(M+m)r^2+I} [rad/s^2]\) …(1)

 

 これらを

  [A] \(T_1=Mg-Ma\)

  [B] \(T_2=ma+mg\)

 に代入して整理すると

 

  \(T_1=Mg\displaystyle\frac{2mr^2+I}{(M+m)r^2+I} [N]\) …(3)

 

  \(T_2=mg\displaystyle\frac{2Mr^2+I}{(M+m)r^2+I} [N]\) …(4)

 

 となる。